「RAGはもう古い?」AIエージェント時代の”コード検索”決定版『Greb』が登場──MCPネイティブで次世代モデルを凌駕

はじめに

2025年も終盤に差し掛かり、AIモデルの進化が一段と加速しています。8月にはOpenAIのGPT-5がリリースされ、Anthropicからは9月にClaude Sonnet 4.5、10月にClaude Haiku 4.5、そして11月には最高峰のClaude Opus 4.5が登場しました。

しかし、私たちエンジニアが日々直面している本質的な課題は変わっていません。それは「AIにコードベースの文脈(コンテキスト)をどう正確に渡すか」という問題です。

コンテキストウィンドウがいくら広がっても、無関係なファイルを大量に読み込ませれば精度は落ち、コストは跳ね上がります。

そんな中、「AIエージェントのためのインテリジェントなGrep」を標榜する興味深いツールが登場しました。その名も『Greb』。今回は、独自AI「Cheetah AI」を搭載し、最新のMCP(Model Context Protocol)にネイティブ対応したこのツールの実力を、公開情報と技術的背景から深掘りします。


Grebとは何か?

公式サイト(grebmcp.com)によると、Grebは単なる検索ツールではなく、コーディングエージェントに「正確なコード片」を供給するための専用エンジンです。

主要な特徴

  • 自然言語でコード検索:正規表現を覚える必要はなく、「ユーザー認証関数を探して(find user authentication function)」と頼むだけで、文脈に即したコードを抽出
  • Cheetah AIエンジン:文脈理解とランキングに特化した独自AI。単純なキーワードマッチではなく「意味」を理解して検索結果を返す
  • AIエージェントとの統合:複雑なRAG(検索拡張生成)システムを構築せずとも、AIエージェントに「検索能力」をプラグイン可能
  • MCP対応IDEとの連携:Claude Code、Cursor、Windsurfなど主要な開発環境に対応

なぜ「Greb」が重要なのか?

GATZ Techとしての独自視点(インサイト)を交え、このツールが業界に与えるインパクトを解説します。

1. 「MCP(Model Context Protocol)」の採用がカギ

URLのドメインがgrebmcp.comであることからも分かる通り、このツールはModel Context Protocol(MCP)を前提に設計されています。

MCPはAnthropic社が2024年11月に発表したオープンスタンダードで、「AIモデルと外部データを繋ぐUSB-C」のような規格です。Anthropicの公式発表によれば、MCPは「AIシステムとデータソースを接続するための普遍的でオープンな標準」として設計されており、断片化した統合を単一のプロトコルに置き換えることを目指しています。

これまで、CursorやWindsurf、あるいは自作のAIエージェントにプロジェクト全体の知識を持たせるには、独自のインデックス作成やベクトルデータベースの構築(いわゆるRAGの自作)が必要でした。Grebは「MCPサーバー」として機能することで、Claude Desktopや準拠するIDE・エージェントから、設定一つで「強力な検索機能」として呼び出せるようになります。

導入の障壁を劇的に下げるという点で、これは非常に重要な設計判断です。

2. 「探す」から「理解する」検索へ

2025年10月、Cognition社(Devin、Windsurfの開発元)がSWE-grepという高速コード検索モデルをリリースしました。これは従来のエージェント型検索(agentic search)が10〜20ターンの逐次処理を必要としていたのに対し、わずか4ターンで8並列ツールコールを実行することで、フロンティアモデル比20倍の高速化を実現しています。

Grebの「Cheetah AI」も同様のアプローチを取っていると推測されます。コードの依存関係や意味的なつながり(例えば、authという単語がなくても認証ロジックであることを理解するなど)に特化してトレーニングされているのでしょう。

開発者の声として紹介されている「私のエージェントが、ランダムな文脈ではなく完璧なコード片を得られるようになった」という評価は、まさにこの特化型エンジンの恩恵です。

3. エージェント自律化の「ラストワンマイル」

現在、AI開発のトレンドは「チャット」から「エージェント(自律実行)」へ移行しています。

GPT-5はSWE-bench Verifiedで74.9%を達成し、Claude Sonnet 4.5は77.2%(標準設定)〜82.0%(高計算設定)、Claude Haiku 4.5でさえ73.3%という驚異的なスコアを記録しています。

しかし、エージェントが自律的にバグを修正するには、「どこを直すべきか」を自力で見つける能力が不可欠です。Grebは、人間が検索するためだけでなく、AIエージェント自身が検索ツールとして使いこなすことを主眼に置いています。

「GPT-5/Claude 4.5の推論能力」×「Grebの検索能力」という組み合わせは、今後の自動コーディングのスタンダード構成になる可能性があります。


📊 競合との比較:コード検索ツールの現在地

ツール特徴速度MCP対応
GrebCheetah AI、自然言語検索高速✅ ネイティブ
SWE-grepCognition製、8並列ツールコール超高速(〜20x)Windsurf統合
ast-grepAST(構文木)ベース構造検索高速✅ MCP対応
grep.app100万以上のGitHubリポジトリ検索高速✅ MCP対応
従来のRAGベクトルDB + 埋め込み中速要カスタム構築

興味深いことに、Augment社のSWE-benchエージェント開発では、従来のgrep/findが埋め込みベースの検索を上回ったという報告があります。コードベースが構造化されている場合、シンプルなテキスト検索でも十分な性能を発揮できることを示唆しています。

Grebの強みは、この「シンプルさ」と「AI理解力」を両立させている点にあります。


🚀 まとめ:AIの「目」をアップグレードせよ

Grebの登場は、AIによるコーディング支援が「次のフェーズ」に入ったことを示唆しています。

これまでは「AIの賢さ(モデルのパラメータ数)」ばかりが注目されてきましたが、これからは「いかに効率よく、正しい情報をAIに食わせるか(コンテキストエンジニアリング)」が勝負の分かれ目です。

もしあなたが、AIエージェントを使った開発で「ハルシネーション(嘘の生成)」や「文脈の喪失」に悩んでいるなら、GrebのようなMCP対応の検索ツールを試してみる価値は大いにあります。

あなたのAIエージェントは、プロジェクトの全貌を正しく「見えて」いますか?


本記事は2025年11月時点の情報に基づいています。各ツールの詳細は公式サイトをご確認ください。


🔗 出典・参考情報